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第十章:湯気を消さないで


 ――ググイッ

 無理に侵入しようとする肉棒を膣壁が内側へと締め付ける。
 まるで敵兵を一切寄せ付けようとしない城門のようだ。
「ッ……! これはキツいっ!」
 初めての女は痛がるというのは良く聞くが男の方も締め付けられて痛いじゃないか。
 キツすぎて今にもペニスがもげそうだ。

 俺が痛さに耐えているとそれまで黙っていたセレンがペニスを半分ほど挿れた頃、突然声をあげた。
「ッ……いたッ……」
 苦しげに呼気を喘ぎながら膣壁を締め付ける。
「ま、待って……い、痛い……んっ」
「もうすぐ入るから、力抜いて少し我慢してくれ」
 痛みで力を抜けるはずもないことは目に見てわかった。
 しかしここで焦らすと余計に痛いらしい。心を鬼にして腰を突き出し、強引に根元まで押し込んだ。

 直後、亀頭の先でプチッと何かが弾けるような感触がした。
「くふぅっ……あぁッ、んぁぁぁああああッッ!」
 ビクンッと背を反らし、悲鳴にも似た声が風呂中に響き渡った。

 途切れ途切れに苦しそうな息づかいが聞こえる。
「っ……んぁ……ば、ばか……優しくって言ったじゃないっ」
「悪かったよ、でもあそこで一気に挿れないともっと痛かったはずだ」
 ちゃんと膣に入ったか確認するように結合部を見ると愛液と血のようなものが混ざり合った粘液がトロッ……と漏れていた。
 血を見て感動するなんて事はきっとこんな時くらいだろう。処女だと分かってはいたがこうして実際に自分が初めての相手になってみるとこれはこれで嬉しいものだ。
「セレンとひとつになれたよ」
 顔が見えないのをいいことにキザなセリフを吐いてみた。

「ばっ、ばかいわないでよ。そんなセリフ言われても嬉しくなんかないわよ。それにまだ気持ちよくしてもらってないんだからねっ」
 表情は見えないが会話でリラックスしているようだった。
 先ほどまで容赦なく肉棒を締め付けていた狭膣に少しだけゆとりが出来ていたからだ。
 この瞬間を逃すまいと挿れたままの肉棒に力を入れ、小刻みに腰を揺すり動かした。
「ッあ! 痛っ、あっッ! んァっあっ、あァンッ!」
 肉棒と膣壁が擦り合い、破瓜血と愛液が交ざりあったヌルヌルとした粘液がくちゅっくちゅっと卑猥な音を醸し出す。

 そんなに容易く感じてくれるものだとは思わなかったが苦悶と驚き混じりの喘ぎは次第に変化していった。
「ひぁっ……や、な、なんか熱い、さっきと違う……痛いのに……っぁ、熱くてなんか……くっ、変な感じ……」
 肌同士がぶつかるパンパンという音とぴちゃぴちゃという音が入り混じり、結合部から恥蜜がぽたっぽたっと床に滴り落ちた。

 断続的に続く快感の波が押し寄せ、すごくいやらしい気持ちがこみ上げてきた。
 淫らに濡れたセレンの膣に浸った俺のペニスは水を得た魚のようにピチピチと跳ね、さらに大きく膨らみ、硬さを増した。
 俺は荒く乱れた息を吐き、名前を叫んだ。
「――っくはぁ……セレンっっっ!」
 腰を揺れ動かしたまま、小さくとも充分な柔らかさの胸を揉み、乳首をこねくりまわした。
「あぁっ、んっ! お、おっぱい、ちいさくてごめんねっ」
 か細い声で喘ぎながら耳を真っ赤にしてつぶやいた。

 そうかセレンのやつ胸が小さいことを気にしていたのか。可愛いやつめ、コイツにもこういうところがあるのか。
「気にすんな、さっきも言っただろ、俺は小さいのがすきなんだよ」
「あっ、あぁっ、き、気持ちぃいっ、んっんっ……あ、あぁっ!」
「俺が、俺がおっぱい大きくしてやるからっ」
 両手で目いっぱい胸を揉みしだきながら、お尻にお腹をぱんぱんっと強弱をつけ打ち付けた。

 するとしばらくしてセレンが尿意を訴えかけてきた。
「あ、待っ、て、なんか……なんか、おしっこでそ……う、腰振るの、やめてっ」
 しかしそれでも振るのをやめず一定のリズムで腰を振り動かした。

 潮吹きは尿意と似ているというのを雑誌で見たことがある。
 処女を失ったばかりで、しかもまだ経験の浅い俺とのセックスで感じるだけならまだしも、潮吹きなんてことがありえるのか? ただ単に尿意を催しただけかもしれない。
 しかし万が一ということもある、決めつけはよくない。
「セレンっ! それは潮だ! おしっこじゃないから出してしまえ!」
「し、塩? 塩ってなにっ! あッ、あたまがっ、へんっ、にっ、んぁッ! も、もうっ、我慢できないよぉ!」
 俺はスカトロ趣味はない、だが神聖である黄金水ならば話は別。
 そう、俺は理解力のある男、おしっこでも潮でもなんでもどんとこいだ。

 なんてことを考えているうちにゾクゾクとした快感が襲い、射精感が高ぶってきた。
「なんでもいいから俺を信じろ! いくぞ!」
「だ、ダメ、変になっちゃ、あっあッ、だ、だめぇっ!」

 逃げるように体を身じろぐセレンの腕をつかみ、引き寄せて一心不乱に腰を打ち続けた。

 最初は強く抵抗していたセレンだったが、突然力が抜けたように抵抗感がなくなった。
「あぁっ、んッ、あっ、あぁん……んっ、あ、あぁん、ひゃぁっ」
「セレン! 俺もイク! 一緒にイこう!」
 膣肉を掻き乱すように、抉るように、強く激しく腰を振り、思い切り突き上げた。

「んんんッ! 射精るッッ!」
「んあっ、あぁっ、あっッあっ、あッあッアァアアァアッ!」


 ――(ドピュッッ! ドピュッッッ! ドピュドピュッッッ!)


 怒張が爆ぜるのと同時にセレンの尿道口からじゅぷぅっと音がして、無色無臭の液体が床に飛び散った。どうやら尿ではないようだった。
 ゆっくりと肉棒を抜くと、結合部からもドクッドクッと液体が垂れてきた。

 カクンと、力が抜けて崩れそうになったセレンを包み込むように支えた。
「……っはぁ、はぁ、大丈夫か」
「…………」
 呼びかけに答えないセレンを抱き起こし、慌てて顔を覗き込む。

「お、おい、セレン?」
「……ん、うん、びっくりしただけだから……お、おしっこ漏らしちゃったかも」
「いや大丈夫だ、問題ない。おしっこじゃないから安心しろ」

「ほ、ほんとに……?」
 大丈夫だ、ともう一度言うと、人差し指と中指で俺の左頬をつまんできた。
「痛ッ! いたタタタッ、な、なにするんだよセレンんん?!」
「あんたね、優しくするって言ったのに痛いじゃないのよ、バカァ!」
 つまんだ左頬を斜め下に思いっきり引っ張られた。

「あたしの痛みはこんなもんじゃないんだからね! まだアソコがじんじんするんだから!」
「ご、ごめ、ごめんってセレン、なんでも言うこと聞くから放してくれっ」
 涙目になりながらそう言うと、ぱっと手を放した。

「言ったわね、なんでも言うこと聞きなさいよ」
「わ、わかった。なんでも聞くよ」
 しまった、なんでもなんて言うんじゃなかった。きっと無茶な注文をしてくるに違いない。

「それじゃ、明日もまたあたしのおっぱい揉みなさい。日付変わってるから正確には今日ね、今日の夜に部屋に来て。責任持って気持ちよく、そして大きくしなさいよね」
 どんな無理難題な命令が来るかと思ってビクビクしていたが、完全な俺得じゃないか。
 むしろこっちからお願いしたいくらいのことだ。
 赤く腫れた左頬を押さえ、頷いた。
「はい、精一杯気持ちよくさせていただきます」

「わかればよろしい。でもまだアソコ痛いから、えっちはナシね」
 破瓜したばかりの膣が痛むのだろう。さすがに初めてなのに激しくしすぎた、今日の反省点だな。

 ごめんな、と謝りながらキスをして性交後の余韻に浸っていると
 入り口の方からガチャ、という音と笑い声が聞こえた。
 こんな時間に誰かが来るなんてありえないと思ったがセレンも気づいたようだ。
「ね、ねぇ……誰か来た」
 二人で入り口の方を振り返り、耳を澄ますと微かに声が聞こえた。


「む、先客がいるみたいだな」
「この服、セレンさんのじゃないですかね」
 聞き覚えのある二人の女性の話し声が耳に入ってきた。

「なぁセレン、この声ってさ」
「しっ! 静かに! 隠れてっ」
 俺の胸を軽く突き飛ばして俺の口に手をあてがった。
「え、なんで隠れる必要が――」

「ばかっ! あの声、聞いてわからないの? 雅と日虎さんだよ? 日虎さんなら笑って済むと思うけど雅はあんたのことよく思ってないから見つかったら何されるか分かんないよ」
 入り口と俺の顔を交互に見ながら困惑した表情で喋ってきた。

 確かに初対面で木刀を突きつけて軟弱者呼ばわりしてきた人だ、何かにつけて文句を言って木刀を振り回してきそうだ。さすがに風呂に木刀を持ち込んでくることはないと思いたいが。
 それにしても2人でこんな時間に入浴だなんて木刀女と日虎さんは仲が良かったのか。

 湯船の縁に手を掛けて体を沈めながら、ひそひそ声でセレンが言う。
「あたしが2人の注意を引き付けておくから隙を見てここから出なさい。雅は気配が読めるらしいけど視力があまりよくないから、素早く出れば大丈夫だと思う」
「わ、わかった。たのむ」
 山積みになっている洗面器の裏に隠れるとタイミングを計ったかのように戸が開いた。

 ――ガラガラッ

 積み上げられた洗面器の間から息を潜めて3人のやりとりを覗く。
 最初に声を掛けたのはバスタオルを巻いた髪が腰まである黒髪の女。懸念した通り、手には木刀を持っていた。
「おお。セレン、偶然だな」
 風呂に入るときぐらい置いとけよ、と突っ込みたかった。
 木刀女が喋るのと同じくらいに日虎さんも挨拶をした。
 何故か胸にはタオルを巻いておらず、下半身に小さめのタオルを巻きつけていた。
「やはりセレンさんでしたか、こんばんは」

「偶然ね、雅。こんばんは、日虎さん。いつの間に雅と仲良くなったんですか?」
「いやぁ、実は体を鍛えることが好きという共通点でお互い意気投合しまして、運動後のひとっぷろを浴びに来たんですよ」
「なるほど〜。3人でゆっくりこっちで温まって話しませんか?」
 セレンが片目を閉じてこちらへ合図をしてきた。
 よし今だ出よう、と身を起こそうとしたときだった。

「く、くせものーッ!」
 やばい! バレた! こ、殺される!
 そう思い、慌てて目を閉じて頭を押さえ、屈んだ。



 しかし思わぬところで音がした。

 ――ゴンッ! バッシャーン!

 何か硬い物同士がぶつかる音と、水しぶきが上がる音がした。
 木刀女が大きな声で吃驚したように叫んだ。
「せ、セレン! 日虎どの! 曲者だ!」

 恐る恐る洗面器の陰から湯船の方を覗いてみると木刀女が先ほどまで持っていた木刀がライオンの湯口へと突き刺さっていた。

 そう、木刀女はライオンの壁泉を“何か怪しい者”と勘違いして木刀を投げたのだ。
 目を凝らしてみるとライオンの牙が片方折れてなくなっていた。
 凄まじい破壊力、そして視力の悪さ。

 セレンは今こそ逃げるべきといわんばかりに俺に目配せをしてきた。
 2人の視線がライオンへと逸れているのを確認して、なるべく音を立てないように脱衣所の方へ駆け込んだ。
 入り口から見えないところまで逃げ、風呂場を覗き込むと取り乱した木刀女を落ち着かせようとしているセレンと日虎さんの姿が見えた。
「良かった、バレてないみたいだな」
 体を急いで拭き、服を着て足早に外へと出た。
 木刀女怖すぎだろ、来たのがセレンとのセックス後だったのが幸いだけど。
 それにしても日虎さんは服を着てた時には分からなかったけど、胸大きかったなぁ。

 螺旋階段を上がり、居間へと戻ってコーヒーを淹れる。
 時計を確認すると針は2時半を回っていた。2時間も風呂にいたのか、もう深夜じゃないか。
「今日の夜も楽しみだ、部屋に帰って寝るかな」

 マグカップに口をつけ、ふと2階の方を見上げると明かりが漏れている部屋が一つあった。

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