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第一章:エロ・ストーリーは突然に


 俺が意を決して電話を掛けると電子音が鳴った後、若い女性が電話に出た。
「はい。こちら日本精子特別管理局少子化対策課です。ご用件をどうぞ」
 女性が精子という言葉を口にすると何か熱く込み上げるものがある。俺は小学生か。
「ハァハァ」と漏れる吐息を抑えて俺は言う。

「あの。テレビ見て電話したんですけど」

 すると女性はため息をつき、またですかといった。どうやら俺が電話する前に何度かイタズラ電話があったらしく勘違いをしているようだった。
 俺の吐息がまずかったのだろう、そりゃ勘違いもする。

「いや違いますよ。本当にちん……いやペニスあるんです」
 俺がそういうと女性は半信半疑ながらも、本当ならここに来て欲しいと住所や自分の名前を教えてくれた。電話を切ったあとメモをした紙を見つめて呟いた。
「“ミラ”さんかぁ。どんな字書くんだろうか」
 この世に生を受けてまともに口を利いた女性は彼女が初めてだ。本当はあの宝石を3万円で売りつけてきた女が初めてだが、あの事はなるべく思い出したくない。

「そうだ!」と俺は勢いよく立ち上がりパジャマを脱いだ。
 精一杯のオシャレをして行こう。もしかして、いやもしかしなくても精子を採取する時にペニスを見られるだろう。俺の一度も女性に侵入したことのない、この桃色の熱く燃え滾るペニスを若く美しい女性に見られるに違いない。
 いやもしかしたらその女性にペニスを擦られたり、おクチで……みたいなことになるかもしれない。なんて事を考えていたら日課をせずにはいられなかった。シャワーを浴びる前に一発しよう。
 俺はパンツを脱ぎ日課をはじめることにした。

「ハァハァ……ミラさん……」
 まだ見ぬミラと名乗った女性を頭の片隅に残った声だけで想像して俺は一心不乱にペニスを擦った。

 ――ウッ

 そして果てた。
「6回もしてしまった。1発のはずだったのに」
 風呂場で頭から勢いよくシャワーを浴び、念入りに萎えたペニスを洗った。

「よし、これにしよう」
 昔通販で買ったが使わなかった勝負パンツを穿き、同じく通販で買った勝負服を着て
 日が若干沈みかけている夕方、俺は外に出た。
 メモをした住所を頼りに電車に乗った。電車に乗るのなんて久しぶりだな。あんな事件が起きた後でも電車は人で溢れていた。

 ――ここで良かったんだっけか。

 住んでいる街から電車を数回乗り継いで降りた場所はドが付く田舎町だった。
「本当にこんなへんぴなところに日本なんたら管理局とかいう大層なものがあるのか?」
 近くにあったバス停の時刻表を見て首をかしげる。時刻を見るとバスは1日に数本程度しか運行していないようだった。しかも今日の分はもう終わっていた。

「クソ。自慰行為をしていなければ乗れたのにっ」
 そう俺が途方にくれていると後方から聞き覚えのある声が話しかけてきた。
「もしかして、あなたが―― 」
 それは俺が6回もオカズにした張本人、ミラさん本人だった。実物のミラさんは妄想の中のミラさんとはまた違う良さだった。
 日本人形のような美しい黒髪に整った顔立ちに青年誌に載っているようなグラビアアイドルにも引けを取らないくびれた曲線美、そして豊かな乳。
 そして極めつけのTシャツに薄っすら浮かび上がった乳首。おそらくあれはノーブラだろう。童貞の俺だがこれだけは断言できる。間違いなくこの女性は最高の美女だと。

 俺が彼女に見とれて口をあんぐりとしていると状況を察したのか彼女はこう言った。
「すみません。申し遅れました。私は日本精子特別管理局少子化対策課から来ました
 浜 美羅(ハマ ミラ)と申します。こんな格好で申し訳ありません。
 朝にお電話してくださった方ですよね?」

「は、はい。そうです俺が――」

 自己紹介もそこそこに俺はまた見とれてしまった。彼女の声と浮かび上がった乳首が俺の妄想を一層駆り立てたのだ。彼女はこれから俺のペニスをどうするのだろうか、そんなことを考えたら興奮せずにはいられない。

 6回もして萎えたはずのペニスがむくむくと大きくなり、ズボンの上からでもはっきりと分かるほど力強くテントを張ってしまった。
 それを見たミラさんが口に手を当て驚いた声でこう言った。
「本当に、本当にペニスがついていたんですね」

 そりゃ男なんだからついていて当たり前だろ。と言いたいところだったが、どうやら今地球上にペニスがついているのは俺だけのようだった。
 ミラさんから話を聞くと、ここから車で30分ほど行った所に日本精子特別管理局という政府直轄機関があるらしくそこで検査と今後の生活について話をしたいとのことだった。

 ミラさんの車に乗り、移動している間俺は「何か大変なことに巻き込まれたな」なんて事は思わずどんな検査をするのかまた妄想してペニスを膨張させていた。

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